AIで「身の回りの課題解決アプリ」を開発 立命館中学校の中1向け探究講座、2026年度も実施へ

takeforest株式会社(本社:大阪府堺市、代表取締役:竹森洸征)は、立命館中学校(京都府長岡京市)で中学1年生を対象に行っている、AIを活用したアプリ開発体験講座を2026年度も実施する。この講座は同校の探究学習のカリキュラムとして継続的に採用されており、昨年度(2025年度)は中学1年生240名が受講した。生成AIの学校導入が国の政策課題となるなかで、「AIを使う」段階を越えて「AIで課題を解決するものをつくる」経験を中学1年の段階で提供する、生成AIを活用した探究学習の実践事例となっている。

昨年度は中学1年生240名がグループで約50本のアプリを制作
2025年度の講座は、2025年10月から2026年3月にかけて「情報×探究学習」の授業として全10コマ程度で行われた。アプリはグループ単位で制作され、制作されたアプリは全体で約50本だった。takeforest株式会社は、カリキュラム設計、教材開発、講師派遣、メンタリングを担当した。講座は次の4つのステップで進められた。
- キックオフ講演(学年全体):プログラミングやAIとは何か、何が大切なのか、何ができるようになったのかを実例も交えて紹介し、開発への心理的なハードルを下げる
- ワークシートを使ったアイデア検討:学校生活・部活動・家庭など身の回りから「悩みごと」を洗い出し、誰のどんな悩みごとをどう解決するのかを言語化する
- 開発ハンズオン:AIツールを活用してアプリを実装。講師・メンターが各グループに伴走し、開発や修正の方法を教えながら試行錯誤する
- クラス発表・振り返り:制作物を互いに発表し、誰のどんな悩みごとをどう解決するのか、そのためにどんなアプリを開発したのかを言葉にして共有する
生徒が制作したアプリには、学校内で先生の居場所がわからず提出物を出せないという課題に対し、先生に位置を登録してもらい生徒がいつでも先生を見つけられる「Teach Finder」、友達との会話で話題がなくなり気まずくなったときにAIでサポートする「Chat Buddy」、スマートフォンやタブレットでSNSや動画などをついつい見てしまう課題に対し、勉強スケジュールと時間制限を設定して画面をロックする「せーげん」などがある。
中学1年生ならではの着眼点として、部活動の連絡、勉強のTODOや持ち物の管理、学校のマップ、食堂のメニューや行列の解決など、自分の身の回りにある具体的な悩みを解決するアプリが多く見られた。細部までこだわった、実際に使えるようなアプリも多数あったという。受講アンケートでは、「アプリを作ってみたことで、自分でもまた何か考えて作ってみたいと思う」と答えた生徒が56.47%、「アプリを作ってみたことで、作る前と比べて、作りたいもののイメージがはっきりした」と答えた生徒が62.94%だった。生徒からは「困っている問題についてしっかりと考えることができた。また、友達と協力して作成することができた。」「前よりAIをもっと知ってもっと好きになりました。」といった声が寄せられている。

「アイデアで終わらず、形にして見直す」探究へ 担当教員の手応え
立命館中学校高等学校 課題研究科・情報科の担当教員である長野教諭によると、同校ではこれまでも「身の回りの課題を発見し、その解決策を考える」ことを重視した探究学習に取り組んできたが、一昨年度まではアイデアを考える段階で終わることが多く、解決策の実現可能性を十分に検証する機会を設けられていなかったという。昨年度はAIを活用したアプリ開発を取り入れたことで、生徒たちが自分たちのアイデアを実際の形にし、使いながら改善していく経験ができた。実際にアプリとして形にすることで、「本当にこの機能で困りごとを解決できるのか」「利用する人にとって使いやすいのか」といった視点が生まれ、より深い探究につながったとし、従来のアイデア発表だけでは得られなかった大きな成果だったと振り返る。
生徒の変化として特に印象的だったのは、「自分たちにもアプリをつくれる」という自己効力感の高まりだという。授業当初は、アプリ開発を特別な技術を持った人だけができるものと考えていた生徒も少なくなかったが、試行錯誤を重ねて実際に動くアプリを完成させる経験を通じ、課題解決の主体者として考える姿勢が見られるようになった。仲間と議論しながらアイデアを磨き、AIから得られた結果をそのまま受け入れずに改善を重ねる姿も多く見られたという。

国の方針転換と、従来型プログラミング教育の壁
日本の学校教育において、生成AIに関する国の方針は「様子見」から「利活用の推進」へと明確に転換している。文部科学省は2024年12月26日に「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を公表し、2023年7月の暫定的ガイドラインを改訂した。同ガイドラインでは「人間中心の原則を基本にすること」「情報活用能力育成の観点から生成AIを考えること」という考え方が示されている。さらに文部科学省は、2026年度(令和8年度)の「生成AIパイロット校」公募で、次期学習指導要領の改訂を見据え、AIを含む情報活用能力の育成に向けた教材実証を行う学校を指定する方針を示している。一方で、こうした国の実証事業の多くは公立学校が対象で、私立中高が独自に取り組みを設計・蓄積している事例はまだ限られている。
また、従来型のプログラミング教育では、プログラミング言語の文法習得に多くの時間がかかるため、中学1年生の段階では「動くものが完成する前に挫折する」という壁に突き当たりやすいという構造的な課題がある。takeforest株式会社の講座はこの順序を反転させ、AIの活用によって技術習得の負荷を大幅に下げることで、生徒が最初から「身近な課題を見つけ、それを解決するものをつくり、試して直す」という開発サイクルそのものを体験できるよう設計されている。技術の習得ではなく「何をつくるか」を言葉にすること、そしてうまくいかないときも何度もやり直して試行錯誤すること。この2つを重視した内容になっている。

2026年度は9月〜12月に実施、パッケージ化で他校への提供も
2026年度の講座の概要は次のとおり。
- 実施時期:2026年9月〜12月
- 実施校:立命館中学校(京都府長岡京市)
- 対象・規模:中学1年生 240名(予定)
- 講座回数:全10回程度
- takeforest株式会社の担当範囲:カリキュラム設計、教材開発、講師派遣、メンタリング
代表取締役の竹森洸征氏は、AIが急速に進歩するなかで人は何を学ぶべきかという議論が続いているとしたうえで、その一つの解が「自分は何をつくりたいのか」を考え、言葉にし、実際に形にしてみることだと述べる。AIが出してきたもので満足するのか、満足せずに自分の理想にこだわって試行錯誤を続けるのか、その分かれ目こそがこれからのAI時代に問われる力だとし、その力を育むプログラムを今後も開発・設計していくとしている。同社は教材とカリキュラム設計をパッケージ化し、中学校・高等学校への提供を進めている。あわせて、地域の産学連携プログラムとの接続により、中学から大学・企業までを貫くAI人材育成の連続的な学習環境の構築を目指しており、導入を検討する学校・教育委員会・企業からの問い合わせを受け付けている。












